腹腔鏡下尿膜管摘出術

泌尿器科疾患について

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腹腔鏡下尿膜管摘出術

1.目的について

尿膜管は通常胎生期に存在する臍と膀胱をつなぐ管ですが、成長とともに消退します。しかし、遺残尿膜管に膿瘍、のう胞、または悪性腫瘍が発生することがあります。(図1)

尿膜管側面図
創の違いについて
 図2 創の違いについて

サイズが大きい場合、症状を伴う場合あるいは腫瘍を疑う場合などには根治治療として尿膜管摘出術が必要です。尿膜管摘出術は通常、臍から恥骨の上までの正中切開創で開腹し、臍から膀胱の頂部までの尿膜管を剥離、摘出します。(図2)  尿膜管疾患の患者さんは比較的年齢が若い患者さんが多く、しばしばその傷が精神的ストレスとなることがあります。こうした背景のもと、腹腔鏡下尿膜管摘出術が行われるようになりました。 腹腔鏡下尿膜管摘出術は、3~4箇所の小さな創のみで手術が可能であり、大きな創を残すことなく手術を行うことができます。 当院でも2014年3月から本術式を施行しております。 また、2016年9月からは、右下腹部の傷と臍の傷の2カ所のみの傷で手術を行う腹腔鏡下手術(Reduced port surgery:傷の数をへらした手術)をおこなっています。図2のように2カ所の傷から手術を行います。臍は再形成するため、右下腹部の傷のみが残りますが、この傷は下着に隠れる部位となるため手術後の傷は目立ちません。当院では、2014年3月から本手術を開始し、2017年6月までに61例の手術を施行しております。

2.適応

手術が必要と判断した尿膜管疾患(尿膜管のう胞、尿膜管膿瘍、尿膜管悪性腫瘍)の患者さんです。尿膜管膿瘍の患者さんでは、必ず手術を行う必要性はありませんが、炎症を繰り返す場合、また、においや違和感がある場合、今後の再発予防のために手術を行う場合があります。適応については、よく外来主治医とご相談ください。
・その他

3.方法について

尿膜管疾患に対して腹腔鏡下に手術を行います。
まず図2のごとく2~3箇所の小さい穴を腹壁にあけ、筒状の器具(トロカー)を挿入します。炭酸ガス(CO2)を注入し、おなかを膨らませて手術のスペースを作り、トロカーよりカメラ、鉗子等を挿入して手術を行います。尿膜管は膀胱の頂部と臍をつなぐ管です。

まず膀胱頂部で尿膜管を同定、離断しその剥離を臍へ向け進めます。臍の部分で切断し尿膜管を専用の袋に入れて摘出します。臍を合併切除する場合は臍と一緒に尿膜管を摘出します。膀胱が一部開放される場合は、腹腔鏡下に縫合閉鎖します。ドレーン、尿道カテーテルを留置し手術が終了となります。臍の再建、管理については原則、形成外科と平行して外来フォローさせていただきます。

創の違いについて
 図2 創の違いについて

4.予想される合併症について

腹腔鏡下手術の一般的な合併症としては、出血や臓器損傷ならびに止血,損傷修復のための開腹処置があげられます。これらを予防するためには十分な経験を積んだ医師が細心の注意を払って本手術を行うことが必要です。
当院では、泌尿器内視鏡学会認定医および院内腹腔鏡手術認定を受けた術 者が手術を担当します。安全には十分注意して手術を行っております。
予想される主な合併症は下記の通りです。合併症の細かいことはお気軽に担当主治医にご相談ください。
予想される主な合併症

●発熱・感染症

感染症予防の目的で術前後に抗生剤の点滴投与を行います。しかし、術後創感染、腹腔内感染、尿路感染などが起きる場合があります。この際は、抗生剤の投与や入院期間の延長が必要となる場合があります。特に尿膜管膿瘍摘出の場合は、既に尿膜管内に感染があるため、創の感染を起こすリスクが少し高くなります。創感染を発症した場合は、創洗浄、再縫合などの処置が必要となることがあります。

●出血

術中あるいは術後に多少の出血を起こす場合があります。もし、術後に持続的な出血を認めた場合には血管カテーテル操作による止血処置や再手術を行う場合があります。また、出血量が一定の程度を超えた場合には、術中、術後に輸血を行う場合があります。

●肺静脈血栓症

術中または術後の臥床により、下肢の静脈に血栓(血のかたまり)ができ、それがはがれて移動し肺の血管が詰まることがあります。(肺静脈血栓症)当院では、手術肺静脈血栓症ガイドラインに基づき、その予防措置をおこなっております。予防のため、術中~術後に弾性ストッキングを着用していただき、できるだけ早期の離床を促しております。
 ただし、離床の判断は医師が行っておりますので患者さん自身の判断では行わないでください。(麻酔薬等の影響により、ふらつき、転倒する場合があるためです。)また、術後に血栓予防の注射を行っております。万が一、肺静脈血栓症が発症した場合は専門の科と対応いたします。

●周辺臓器の損傷(腸管・膀胱・血管など)

手術中の剥離操作により周辺の臓器・組織に損傷を起こす場合があります。通常の操作ではまれですが、炎症に伴い腸管と尿膜管及び腹壁との癒着があった場合はそのリスクがあります。腹腔鏡下での修復が困難なときは、開腹手術に移行する可能性があります。また、必要に応じて各専門の外科の医師に修復をお願いする場合があります。また、術中合併症が生じた場合、腹腔鏡下手術中止し、開腹手術に移行する場合があります。これまでの61例では開腹手術に術中変更した症例はありません。

●膀胱からの尿流出、縫合不全

尿膜管は膀胱までつながっており、症例によっては膀胱を一部開放したのちに尿膜管を摘出します。この場合、開放された膀胱は縫合閉鎖、術後尿道カテーテルを約1週間留置します。
 ごくまれですが術後に縫合部位より尿が漏れることがあります。この場合は尿道カテーテルをさらに3-7日程度留置します。ほとんどは前述のような保存的治療にて治癒しますが、改善を認めない場合は再手術を行うことがあります。

●術後イレウス(腸閉塞)

手術あるいは麻酔の影響で一時的に腸の動きが悪くなることがあります。この場合は食事を一時中止して経過を診ますが、改善を認めない場合には鼻から胃や腸に細い管を入れる処置を行うことがあります。多くの場合は保存的に改善します。

腹腔鏡手術に特有な合併症
●皮下気腫

腹腔鏡下手術は、腹腔内に炭酸ガス(CO2)を注入しスペースを確保して行います。そのため、炭酸ガスが皮下に漏れて術後に皮膚がプチプチしたような状態に感じることがあります。これを皮下気腫と呼びますが体への直接的な悪影響はありませんし、通常は自然に軽快します。

●肩への放散痛

術後、2~3日目に肩へ抜けるような痛みを感じることがあります。腹腔内に残留した炭酸ガスの刺激によるもので、自然に軽快します。

●高炭酸ガス血症

血液内に炭酸ガスが溶け込んで、血液の炭酸ガス濃度が増す状態です。術中の呼吸管理や薬の使用により改善しますが、改善が不十分な場合は、開腹手術に変更することがあります。

●ポートサイトヘルニア

術後、カメラや機械を入れていた創に腸が入り込み腸閉塞などの原因となることがあります。保存的に改善がない場合には創の部分を切開して再手術を行うことがあります。

●空気塞栓

血管内に炭酸ガスが入り込み塞栓症状を起こすものです。通常は少量のガスでは起こりません。術中のガスの圧などに注意して手術を行います。

5.他の一般的な治療法

尿膜管疾患の根治治療は原則として手術となります。腹腔鏡手術と開腹手術が、保険適応があります。

6.人権・プライバシーの保護について

この治療で使用させていただく患者さんの個人情報は、「学校法人慈恵大学 個人情報保護に関する規程」、関連細則を遵守して保護につとめ、細心の注意をもって取り扱います。治療の結果が、学会や医学論文などで公表される場合がありますが、患者さんの氏名はイニシャルや記号などで置き換え、プライバシーに関することが外部に漏れることは決してありませんのでご安心ください。

7.費用について

腹腔鏡下尿膜管摘除術は2014年4月から保険適応となりました。

ご不明な点がございましたらお気軽にお問合せ、ご相談ください。
泌尿器科外来へ代表(03-3433-1111)からお電話ください。
担当統括責任者:佐々木 裕(ささき ひろし)