女性ヘルスケア

泌尿器科疾患について

疾患名をクリックすると詳しい内容がご確認いただけます。

女性の身体は、年齢やライフステージの変化に伴い、排尿トラブルや骨盤臓器の不調が起こりやすくなります。
「年のせいだから仕方ない」「恥ずかしくて相談しづらい」とお一人で悩まれている方も多いですが、適切な診療により症状は改善できます。
当院では、女性泌尿器科の専門医が、最新の知見と豊富な経験をもとに、丁寧で安心できる医療を提供しています。
症状の程度やライフスタイルに合わせた治療をご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

対象となる症状・疾患

  • ● 尿漏れ(くしゃみ・運動時、突然の尿意など)
  • ● 頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感
  • ● 骨盤臓器脱(膀胱や子宮、直腸が腟から下がってくる)
  • ● 慢性的な膀胱の痛み(間質性膀胱炎/膀胱痛症候群)
  • ● 閉経後の排尿トラブル・性交痛(GSM)
  • ● 産後・加齢に伴う骨盤底のゆるみ

各疾患のご説明

間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)

特徴: 細菌感染がなく、頻尿・尿意切迫感・膀胱の痛みが慢性的に続きます。

「尿がたまると痛くなり、排尿すると軽くなる」のが典型的です。

主な症状

  • 昼夜問わず頻尿(1日10〜20回以上)
  • 急に尿意が起き、我慢できない(尿意切迫感)
  • 排尿前に膀胱の痛みや違和感
  • 病状が進行すると膀胱容量が減少

診断

  • 膀胱鏡検査で、ハンナー病変(潰瘍)を確認
  • 尿細胞診や組織検査(生検)でがん等を除外

治療

  • 膀胱水圧拡張術(麻酔下で膀胱を拡張)
  • ハンナ病変の内視鏡切除・焼灼
  • 薬物療法:アミトリプチリン、抗アレルギー薬など
  • 膀胱内注入療法:ジムソ膀胱注入 
  • 食事・生活指導:刺激物の回避、ストレス管理など

症状の緩和・QOLの改善を目標に、複数の治療を組み合わせて行います。

女性の尿失禁

女性に多い尿漏れは、大きく3つのタイプに分けられます。

女性の尿失禁

しばしば女性に認められる尿失禁は、尿道が原因と考えられる「腹圧性尿失禁(約50%)と膀胱が原因と考えられる「切迫性尿失禁(約10%)の2つに大きく分類されます。また、両者が混合している場合(約40%)もしばしばあります。一般に、軽症な尿失禁に対しては外来で骨盤底筋体操の個別指導を行います。また、切迫性尿失禁に対しては薬物療法が有効です。一方、重症な腹圧性尿失禁に対してはメッシュ(テープ)を用いた手術を行っております。メッシュの両端を恥骨上に出すTVT(Trans-Vaginal Tape)法と閉鎖孔に出すTOT(Trans-Obturator Tape)法がありますが、どちらの手術も経腟的に短時間(15-30分)で終わる低侵襲な手術法です。尿失禁でお悩みの方は是非一度ご相談ください。

種類

  • 腹圧性尿失禁:咳・くしゃみ・運動時などお腹に力が入ったときに尿が漏れる
  • 切迫性尿失禁:突然の強い尿意でトイレに間に合わず漏れてしまう
  • 混合性尿失禁:上記2つの症状が混在

治療法

  • 骨盤底筋体操(Kegel体操):軽度の場合に効果的
  • 薬物療法(主に切迫性尿失禁に対して)
  - β3作動薬(ミラベグロン、ビベグロン)
  ※抗コリン薬は高齢者への使用に注意が必要です
  • スリング手術:中等度以上の腹圧性尿失禁に対して行う日帰り低侵襲手術


初診時には排尿記録や問診票(ICIQ-SF)などを用いて、症状の把握と治療効果の評価を行います。

骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse)

骨盤臓器脱とは

出産や加齢によって骨盤底の筋肉や靱帯が緩むと、膀胱・子宮・直腸などが腟から脱出してくることがあります。 出産経験のある女性の30〜40%に見られるといわれており、決して珍しい病気ではありません。

(膀胱は黄色、子宮はピンク色、直腸は茶色)

正常正常
子宮脱子宮脱
膀胱瘤膀胱瘤
直腸瘤直腸瘤

 

主な症状

  • 腟から何かが出てきたような違和感・下垂感
  • 夕方にかけて強くなる不快感
  • 排尿・排便がしづらい
  • 下着にこすれて痛みや出血が起こることも

治療法

保存的治療
  - 骨盤底筋訓練
  - ペッサリー療法(腟内に器具を挿入し臓器を支える)
 
手術療法
  - ロボット支援下仙骨腟固定術(RSC):精密操作が可能な最新の低侵襲手術
  - 腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC):メッシュを用いた標準的手術
  - 非メッシュ手術(NTR):腟壁や靱帯を補強
  - TVM手術(現在は選択に慎重を要する)

注意点

  • メッシュ使用による腟や膀胱への影響(痛み・おりもの・膀胱炎症状)
  • メッシュを使わない手術は再発率がやや高い
  • 膀胱瘤手術後に尿失禁が生じることもあります(de novo SUI)

放置すると?

命に関わることはほとんどありませんが、自然に治ることもありません。
症状が進行すると、排尿・排便障害が悪化し、まれに腎機能障害に至ることもあります。

女性泌尿器のトラブルに、一人で悩まずご相談を

当院では、女性泌尿器疾患の診療に力を入れています。
「こんなことで相談してよいのかわからない」
「恥ずかしくて我慢している」
そのような悩みに対しても、丁寧な問診と専門的な検査・治療でお応えいたします。
女性医師・女性看護師の対応も可能です。どうぞ安心してご相談ください。

経膣式メッシュ固定術(TVM)とは

膀胱瘤に対しては前腟壁を切開し、メッシュを膀胱と腟の間に留置します。直腸瘤に対しては後腟壁を切開し、メッシュを直腸と膣の間に留置します。子宮脱に対しては膣の前後にメッシュを留置するか、子宮そのものを膣から摘出します。また、膀胱瘤・子宮脱・直腸瘤はしばしば同時におきますので、それぞれの病状により使用するメッシュの範囲が異なってきます。

膀胱瘤に対する前膣壁メッシュ固定術(メッシュは青色)

膀胱瘤に対する前膣壁メッシュ固定術

直腸瘤に対する後膣壁メッシュ固定術(メッシュは青色)

直腸瘤に対する後膣壁メッシュ固定術

腹腔鏡下メッシュ固定術(LSC)とは

図のようにカメラや鉗子を入れる入口(ポート)を作成します。次に、子宮と両側の卵巣を摘出した後、腹腔内より膀胱と腟、直腸と膣の間にそれぞれメッシュを留置します。このメッシュを頭側に引っ張って、脊椎の前面に固定します。したがって、子宮と卵巣を摘出した方がメッシュをしっかりと引っ張ることが出来ますが、必ずしも子宮と卵巣をとらなければいけない訳ではありません。この手術は子宮脱や子宮摘出後の膣断端脱に対して通常行われます。

腹膣鏡手術の傷腹膣鏡手術の傷
子宮脱に対する腹腔鏡下メッシュ固定術子宮脱に対する腹腔鏡下メッシュ固定術