大きさが4 mm以下の尿路結石は、飲水・運動などで自然排石が期待できるので経過観察することが可能です。自然排石が困難と判断されれば手術を考える必要があります。手術といっても衝撃波で体外から結石を砕く体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡手術などが用いられますが、ほとんどの結石はESWLのみで治療可能です。
1) 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
当科では本院(西新橋)と第三病院(東京都狛江市)と葛飾医療センター(葛飾区)の3病院に体外衝撃波結石破砕装置ドルニエ社製リソトリプターDを設置しています。この装置はレントゲンで監視しながら、体外から結石に向けて正確に衝撃波を照射し結石を破砕します。破壊された結石は、尿とともに体外に排出されます。ひどい痛みはないので手術中の麻酔は必要なく、身体への傷もほとんど残りません。また手術時間は45~60分程度ですので、外来通院で行っています。なお治療成績は、大きさ4 mm以下の小結石に破砕される率、これを治療有効率といいますが90%前後ときわめて良好です。このうち最初の1回で終了する確率は約60%で、残りの30%は2回以上の治療が必要となります。この有効率は結石の大きさと成分によって異なり、2cm以上の大きな結石やシスチン結石は砕けにくい傾向があります。また副作用として、稀に腎臓の周囲に血の塊(腎被膜下血腫)(頻度は0.5%前後)ができたり、腎盂腎炎を起こし38度以上の高熱がでることもありますが(頻度は5%前後)、このような副作用がなければ後遺症の心配も少なく安全に手術が受けることができます。治療費は保険が適応され、3割負担の方で約6万円です。この治療費は片側(右側なら右側のみ)の結石に対する最初の治療のみいただきますが、2回目以降は無料です。もし、結石がその反対側(たとえば左側)にもあり、これに対してもESWLをおこなうときには改めて同じ料金がかかります。
2) 内視鏡的手術
ESWLが不成功であったとき、あるいは不成功が予想されるときにおこないます。尿管の結石に対しては経尿道的尿管結石砕石術(TUL)を、腎臓の結石に対しては経皮的腎砕石術(PNL)をおこないます。
経尿道的尿管結石砕石術(TUL)
経尿道的に内視鏡を尿管の中まで挿入し結石を砕いたり、取り出したりする手術法です。手術時間は結石の大きさや壊れやすさによって多少差はありますがおおむね1時間です。結石を砕くのにはレーザーなどが使用されますが、砕いている最中に結石が腎臓に戻り砕くことができなくなることが約30%の確率であります。この場合にはその後にむしろESWLで結石を砕きやすい状態となるため不成功ではなく半分成功といえます。尿管を内視鏡やレーザーで傷つける尿管損傷、尿管の出血、手術後の感染症といった合併症を起こす確率が3%程あり、そのときには合併症に対する治療が必要となります。また、きわめて稀ですが、尿管が極端に狭いために内視鏡が尿管に入らない場合があり、このときはこの手術はおこないません。この手術には麻酔が必要ですから5~7日間の入院が必要で、3割負担の方のご負担は約12万円です。
経皮的腎砕石術(PNL)
大きな腎結石でESWLでは治療が困難と判断したとき、あるいはESWLで十分に結石が砕けなかったときに行わる手術法です。全身麻酔をしてうつ伏せになり背中から腎臓の中にある尿が集まる空間(これを腎盂といいます)に向けて直径約1cmのトンネルをつくりそこから腎盂に内視鏡をいれて結石を砕いたり、取り出したりします。この手術も入院が必要です。結石が大きい場合には1回の手術ですべての結石を取り除くことが困難な場合があります。このときには2回以上に分けて手術をおこなう必要があります。合併症としては低い確率ではありますが出血、腎盂の損傷、手術後の感染などがあります。出血はトンネルをつくるときに起こりやすく、このときには結石を砕く作業はおこなわずトンネルのみの作成で手術を終了し、出血が収まったあと日を改めて結石を砕く手術をおこなうことがあります。腎盂の損傷は結石を砕いている最中に腎盂が傷つくもので、尿が尿路の外の体内に漏れることがあります。このときも手術を中断して傷が治ってから日を改めて手術をおこなうことがあります。 結石が取り除かれたのちにはトンネルには腎瘻(じんろう)という管を入れえて手術を終了します。この腎瘻は手術後3~7日で取り外します。入院期間は7~10日で、保険診療で3割負担の方のご負担は約12万円となります。ただし、手術が2回以上となる場合には追加のご負担が必要となります。