尿路結石症

泌尿器科疾患について

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尿路結石症

1.尿路結石症とは

腎臓から尿管・膀胱・尿道に至る尿の通り路(これを尿路といいます)に結石が存在する病気です。結石のほとんどは腎臓でつくられます。そして、その一部が尿とともに尿管、膀胱に流れ落ちるのです。結石が尿とともにスムーズに流れ、自然に排出されれば問題はありませんが、腎臓や尿管にとどまると、腰やお腹の激しい痛み・血尿などを起こすことがあります。放っておくと腎臓の機能が低下する場合もあります。尿路結石はその存在部位により腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石の4つに分類されます。しかし95%以上は腎結石と尿管結石です。

2.結石の成分について

結石を構成する成分には蓚酸カルシウム、燐酸カルシウム、尿酸、燐酸マグネシウム・アンモニウム、シスチンなどがあります。蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムが最も多く、これらは全尿路結石のうちの約2/3を占めますが、これらの多くは原因が不明で、一部の方に尿の中にカルシウムが多く出てきてしまう状態があることがわかっています。尿の中にカルシウムが多く出る状態としては、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、寝たきり状態などがあります。尿酸は痛風に、燐酸マグネシウム・アンモニウムは尿路感染症に、そしてシスチンはシスチン尿症という生まれつきの病気の方に密接な関係があります。

3.発病率

一生のうちに尿路結石になる確率(これを生涯有病率といいます)は日本人では約10%ですので、ありふれた病気であるといえます。また、女性より男性に多い傾向があります。

4.治療法

大きさが4 mm以下の尿路結石は、飲水・運動などで自然排石が期待できるので経過観察することが可能です。自然排石が困難と判断されれば手術を考える必要があります。手術といっても衝撃波で体外から結石を砕く体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡手術などが用いられますが、ほとんどの結石はESWLのみで治療可能です。

1) 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)当科では本院(西新橋)と第三病院(東京都狛江市)と葛飾医療センター(葛飾区)の3病院に体外衝撃波結石破砕装置ドルニエ社製リソトリプターDを設置しています。この装置はレントゲンで監視しながら、体外から結石に向けて正確に衝撃波を照射し結石を破砕します。破壊された結石は、尿とともに体外に排出されます。ひどい痛みはないので手術中の麻酔は必要なく、身体への傷もほとんど残りません。また手術時間は45~60分程度ですので、外来通院で行っています。なお治療成績は、大きさ4 mm以下の小結石に破砕される率、これを治療有効率といいますが90%前後ときわめて良好です。このうち最初の1回で終了する確率は約60%で、残りの30%は2回以上の治療が必要となります。この有効率は結石の大きさと成分によって異なり、2cm以上の大きな結石やシスチン結石は砕けにくい傾向があります。また副作用として、稀に腎臓の周囲に血の塊(腎被膜下血腫)(頻度は0.5%前後)ができたり、腎盂腎炎を起こし38度以上の高熱がでることもありますが(頻度は5%前後)、このような副作用がなければ後遺症の心配も少なく安全に手術が受けることができます。治療費は保険が適応され、3割負担の方で約6万円です。この治療費は片側(右側なら右側のみ)の結石に対する最初の治療のみいただきますが、2回目以降は無料です。もし、結石がその反対側(たとえば左側)にもあり、これに対してもESWLをおこなうときには改めて同じ料金がかかります。

2) 内視鏡的手術

ESWLが不成功であったとき、あるいは不成功が予想されるときにおこないます。尿管の結石に対しては経尿道的尿管結石砕石術(TUL)を、腎臓の結石に対しては経皮的腎砕石術(PNL)をおこないます。

経尿道的尿管結石砕石術(TUL)

経尿道的に内視鏡を尿管の中まで挿入し結石を砕いたり、取り出したりする手術法です。手術時間は結石の大きさや壊れやすさによって多少差はありますがおおむね1時間です。結石を砕くのにはレーザーなどが使用されますが、砕いている最中に結石が腎臓に戻り砕くことができなくなることが約30%の確率であります。この場合にはその後にむしろESWLで結石を砕きやすい状態となるため不成功ではなく半分成功といえます。尿管を内視鏡やレーザーで傷つける尿管損傷、尿管の出血、手術後の感染症といった合併症を起こす確率が3%程あり、そのときには合併症に対する治療が必要となります。また、きわめて稀ですが、尿管が極端に狭いために内視鏡が尿管に入らない場合があり、このときはこの手術はおこないません。この手術には麻酔が必要ですから5~7日間の入院が必要で、3割負担の方のご負担は約12万円です。

経皮的腎砕石術(PNL)

大きな腎結石でESWLでは治療が困難と判断したとき、あるいはESWLで十分に結石が砕けなかったときに行わる手術法です。全身麻酔をしてうつ伏せになり背中から腎臓の中にある尿が集まる空間(これを腎盂といいます)に向けて直径約1cmのトンネルをつくりそこから腎盂に内視鏡をいれて結石を砕いたり、取り出したりします。この手術も入院が必要です。結石が大きい場合には1回の手術ですべての結石を取り除くことが困難な場合があります。このときには2回以上に分けて手術をおこなう必要があります。合併症としては低い確率ではありますが出血、腎盂の損傷、手術後の感染などがあります。出血はトンネルをつくるときに起こりやすく、このときには結石を砕く作業はおこなわずトンネルのみの作成で手術を終了し、出血が収まったあと日を改めて結石を砕く手術をおこなうことがあります。腎盂の損傷は結石を砕いている最中に腎盂が傷つくもので、尿が尿路の外の体内に漏れることがあります。このときも手術を中断して傷が治ってから日を改めて手術をおこなうことがあります。  結石が取り除かれたのちにはトンネルには腎瘻(じんろう)という管を入れえて手術を終了します。この腎瘻は手術後3~7日で取り外します。入院期間は7~10日で、保険診療で3割負担の方のご負担は約12万円となります。ただし、手術が2回以上となる場合には追加のご負担が必要となります。

5.再発予防

尿路結石は繰り返しできやすい病気です。10年間に約60%の方が再発します。したがって、予防がきわめて重要です。予防対策は結石の成分によって多少異なりますので、結石が尿とともに出てきたときには、その結石を拾って病院までお持ちいただき成分の分析をしてもらいましょう。

1) すべての尿路結石に共通した注意点

第一に、水分を多く取り尿の量を増やすことで尿を薄めましょう。結石は尿に溶けている成分が固まりをつくってできるものですので、尿を薄くしておけば出来にくくなります。また、尿の量が多ければ仮に結石が出来たときには結石が砂のように小さいうちに尿によって流れ出てしまうので大きな問題とはなりません。水分は1日2~3リットルとるようにしましょう。お茶、ジュース、コーヒーでも結構です。第二に、運動をよくしましょう。尿路結石は寝たきりの方に多いことが知られています。これは運動が不足するために骨からカルシウムが抜けて尿から多くのカルシウムが出てくるためです。また、仮に結石が出来たとしても結石が小さいうちに運動によって落ちやすくなります。

2) 蓚酸カルシウム結石の方の注意点

蓚酸はほうれん草、ブロッコリー、紅茶、チョコレートに多く含まれています。昔はこれらの食べ物をとらないように指導していました。しかし、蓚酸はその他の食べ物にもいくらか含まれており、これらを避けても蓚酸結石が出来てしまうことがわかりました。したがって、現在ではお食事のときには牛乳をとるようにお薦めしています。牛乳にはカルシウムが多く含まれています。このカルシウムが腸の中でお食事に含まれる蓚酸と結合して蓚酸カルシウムとなり便から出てしまいます。その結果、体の中に蓚酸が吸収されにくくなり結石は出来にくくなります。

3) 尿酸結石の方の注意点

尿酸は蛋白の老廃物でお肉を多く食べる方、お酒を多く飲む方の血液の中で増えます。痛風という関節の炎症の原因にもなります。血液で増えた尿酸は尿から体の外に排泄されます。このときに尿が酸味を帯びていると尿酸は尿の中で固まりをつくりやすくなります。したがって、尿酸結石の方はお肉、お酒を控えるとともに尿が酸味を帯びているかどうか病院でチェックしてもらいましょう。尿のpHが5~5.5であれば尿は酸味を帯びていますので、尿の酸味をとるお薬(ウラリット、重曹といったお薬になります)を処方してもらうことができます。

4) 燐酸マグネシウム・アンモニウム結石の方

長い間尿路感染症があることによりできる場合が多いので、抗菌薬を内服し尿路感染症を治しましょう。この場合、結石が体に残っているといくら抗菌薬を飲んでも菌は消えませんので、まず結石を取り除くことが大切です。

5) シスチン結石の方

チオラというお薬と尿の酸味をとるお薬(ウラリット、重曹など)の両者を飲むと再発しにくくなります。

6.結石発作のときの注意点

結石の痛みは激しくつらいもので、救急車で病院を訪れる方もいます。これは結石が尿路をこすって起こるものではなく、結石が尿の通り道を急に塞ぎ尿の渋滞が起こるためのものです。すでに結石発作を経験されている方はご自分で結石によるものであることはおわかりになると思いますので、そのときの対処法を挙げておきます。まず第一に鎮痛薬の坐薬を常に持ち歩き、まずこれを肛門から挿入します。そして、痛みのある部分を暖めることが大切です。ご自宅にいらっしゃるときにはお風呂にお湯をためて入ると絶大な効果があり、多くの方は30分ほどで痛みが楽になります。外出の際にはホカロンを坐薬とともに持ち歩き痛みの箇所をホカロンで暖めましょう。
痛みを止めるものにはブスコパンという飲み薬があります(病院ではこのお注射があります)。飲み薬は坐薬に比べて効果がでるまで時間がかかりますのであまりお薦めできません。日頃から病院で坐薬を処方してもらいましょう。