腎盂尿管がん

泌尿器科疾患について

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腎盂尿管がん

1.腎盂・尿管がんとは

腎盂・尿管の図

腎盂・尿管がんは尿が腎臓で生成された後の通り道である腎盂および尿管内に発生する悪性腫瘍で、組織は膀胱がんと同じ尿路上皮がんが主となります。症状は血尿で発見されることが多く、また、人間ドックなどの超音波検査で水腎症から無症状で見つかることもあります。腎盂・尿管がんの発生頻度は、人口10万人あたり0.5人程度です。男女比は2~3:1で男性に多い傾向があります。  腎盂・尿管がんは手術以外にも化学療法や放射線療法の有効性も確認されていますが、治療法に関しては患者さんの病期、悪性度(グレード)、病状、年齢などを総合的に判断して決定されます。また、良性・悪性の判別が完全につかない場合でも悪性腫瘍に準じた治療法を選択することがあります。  腎盂・尿管がんについての検査は尿検査、尿細胞診、静脈性尿路造影、逆行性腎盂造影、造影CT、MRI、膀胱がん併発チェックのための膀胱鏡検査などを行います。入院の上、下半身麻酔を行なって尿管鏡検査を行うこともあります。これは尿管鏡下で腫瘍の一部を摘出し、病理学的確定診断をつけます。また、腫瘍の悪性度や形状、できた場所などで治療法を決定することもあります。

2.腎盂・尿管がんの治療法

【1】手術療法

腎盂尿管がん 手術療法

腎盂・尿管がんは前述のように組織系が尿路上皮がんです。尿路上皮は腎盂、尿管、膀胱、尿道を覆う組織で、特徴として時間的・空間的多発性という特徴を有しています。これは尿路上皮がんが時期をずらして場所を変えて、同じ尿路上皮のどこかに再発しやすいというものです。例えば、腎盂・尿管がん治療後に尿路上皮がんが膀胱内に再発する割合は我々の関連施設を含めたデータでは約38%でした。したがって、腎盂・尿管がんの手術法は、腎臓と尿管、膀胱の一部を一塊にして摘出する腎尿管全摘除術および膀胱部分切除術が標準術式となります。当院では開腹手術も腹腔鏡下手術も行なっております。

≪腎尿管全摘除術+膀胱部分切除術≫

がんのある側の腎盂・尿管を腎臓と共に尿管と膀胱を一塊して摘出する根治手術です。麻酔は全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して行います。手術時間は麻酔時間も含め5-6時間ですが、出血や癒着、あるいは浸潤度などのためさらに時間を要することもあります。また、術前の検査ではリンパ節に転移がない場合でも、手術にて所属リンパ節を郭清(摘出)すると顕微鏡的に転移が見つかることがあります。したがって、所属リンパ節郭清を同時に行う場合もあります。術後は深部静脈血栓症、誤嚥性肺炎、腸閉塞などの予防のため、病状にあわせてですが早期(術後1日目)より歩行を開始していただきます。

≪尿管部分切除術、内視鏡下腫瘍切除術≫

腎臓は左右2つあり体の毒素を尿として排出する重要な臓器です。前述のように腎盂・尿管がんの標準的手術療法は、腎尿管全摘除術+膀胱部分切除術です。しかしながら、もともと腎臓の機能が悪い方や、何らかの理由でもう一つの腎臓がない方がいらっしゃいます。このような場合、術後の化学療法や、透析を避けるまたは時期を遅らせることを目的にがんのある尿管を部分的に切除し残った正常の尿管をつなぎ合わせる手術や、内視鏡からレーザーを使用してがんを切除する手術を行う場合もあります。ただし、これは悪性度が低く、浸潤していないがんに対して行われるものでありできた部位も重要になるため、すべての方に適応があるわけではありません。

腎盂・尿管腫瘍の手術の入院期間と費用

手術法、病状、術後経過により個々の患者さんで違いがありますが、10~14日間程度の入院治療を要します。入院・手術に伴う費用については健康保険が適用されます。

【2】その他の治療法

●上皮内がんの治療

尿路上皮がんは乳頭状に隆起して発育することが多いのですが、まれに粘膜を広く這うように発育する場合があります。これを上皮内がんといいます。尿管鏡検査などにより上皮内がんと診断された場合、BCG(結核を弱毒化したワクチン)による腎盂内注入療法を行うこともあります。これは同じ尿路上皮がんである膀胱がんでも行われている治療です。

●局所浸潤がんの治療

手術療法、化学療法(術前・術後)、または放射線療法を組み合わせた治療となります。尿路が腫瘍により閉塞され腎機能が低下をきたしている場合は治療に先立って、腎臓に背中から直接、管を留置して尿を出す腎ろう手術を行う場合があります。術前化学療法を行う場合などは、腎機能が大事ですのでこのような処置を考慮します。

●転移がある場合の治療

抗がん剤による化学療法が治療の主体となります。化学療法としては、ジェムシタビン+シスプラチンのGC療法、シスプラチン+メソトレキセート+ビンブラスチン+アドリアマイシンのMVAC療法などの多剤併用化学療法が一般的です。また、局所や転移巣に対して放射線療法が選択されることもあります。

薬物療法:

腎盂・尿管がんに対する抗がん剤の効果は中程度で、腫瘍の悪性度などにより差があります。

放射線療法:

腎盂・尿管がんに対する放射線の効果は中程度ですが、薬物療法と同様に悪性度などでその効果に差があります。転移巣に対して放射線照射を行って痛みの軽減を図ることがあります。