≪根治的腎摘除術≫
がんのある腎臓を周囲の脂肪組織とを一塊して摘出する根治手術です。麻酔は全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して行います。手術時間は麻酔時間も含め3-4時間ですが、出血や癒着、あるいは大きな腎がんなどのためさらに時間を要することもあります。
≪腎部分切除術≫
腎がんと周囲の腎実質を部分的に腎臓から切除する方法で、次の4つが適応とされます。
- ①両側の腎がん
- ②1つしかない腎に発生した場合(他方の腎臓がない場合)
- ③がんができていない側の腎機能が悪い場合
- ④小さいがんで部分切除可能な位置にある場合
特に近年、健康診断や人間ドックの発達により小さいがんが早期に発見される場合が多くなっており、腎部分切除術の適応が増加しています。この手術は可能なかぎり腎機能を温存する目的で施行されますが、手術中、手術後に腎臓の切開部分からの出血や腎臓からの尿もれの危険性があること、部分切除後の腎臓にがんが再発する可能性があるという問題点があります。しかし直径4cm以下の単発性(1個)のがんで以下の条件を満たしている場合、部分切除の治療成績は根治的腎摘除術とほぼ同等です。また、術前に発見できなかった他のがんが、術中超音波検査で新たに認められた場合は全摘術に切り替える場合もあります。麻酔法、手術時間は根治的腎摘除術と同様です。術後は腎切除面よりの出血を予防するため、1-2日のベッド上安静が必要です。
【反対腎(健常腎)が正常な患者さんの腎部分切除術の条件】
1.無症状で発見されたがん
2.血尿を認めない
3.径(大きさ)が4cm以下で単発(1個)
4.切除可能な位置にあること
(特に腹腔鏡下手術の場合は、腫瘍は外方へ突出し、腎盂から離れていること)
以上のように、実際には切除する範囲と腎臓までの到達の仕方によって様々な手術方法が考えられます。それぞれの方法に利点、欠点があるので、各担当医から十分な説明を受け、納得されてから手術法を選択することが大切です。
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根治的腎摘除術 |
腎部分切除術 |
がんの大きさ |
問わず |
4cm 以下 |
がんの位置 |
問わず |
外側(超音波で確認できる腫瘍) |
皮膚切開 |
腰部斜切開、上腹部横切開 |
腰部斜切開 |
麻酔法 |
全身麻酔+硬膜外麻酔 |
全身麻酔+硬膜外麻酔 |
手術時間 |
3-5時間 |
3-4時間 |
有利な点 |
早期離床、十分な切除可能 |
手術側の腎機能温存 |
不利な点 |
腎臓が1つとなる為、将来、腎機能障害となる可能性 |
術中、術後の出血、尿漏れの可能性。術後1-2日のベッド上安静 |