男性不妊症

泌尿器科疾患について

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男性不妊症

1.男性不妊症とは

世界保健機構(WHO)では「避妊せずに1年間性交渉をしても妊娠に至らない状態」を不妊症と定義しています。35歳以上の女性では、半年で妊娠しない場合にも早めの検査が勧められています。

不妊症の原因は、女性のみが41%、男性のみが24%、両方に原因があるのが24%、原因不明が11%とされ、実に約半数のカップルで男性因子が関係しています。そのため、不妊に悩むカップルは夫婦そろって検査を受けることが重要です。

当科では、男性不妊の原因検索・診断・治療を専門に行っています。必要に応じて、当院産婦人科や他院とも連携しながら、適切な医療を提供いたします。
【図1】不妊症の原因 男女割合 不妊症の原因 男女割合 【図2】精液検査基準値
精液量 1.5ml以上
PH 7.2以上
精子濃度 1,500×104個/ml以上
総精子数 3,900×104個以上
精子運動率 32%以上
正常形態率 4%以上
白血球数 100×104個/ml以下

2.診療の流れ

男性不妊の原因は多岐にわたるため、初診では以下のような流れで原因を明らかにしていきます。

  • ①問診表の記入:既往歴、服薬、生活習慣、性交状況など
  • ②身体の診察:精巣の大きさ、静脈瘤の有無などを確認
  • ③精液の検査:精子数、運動率、奇形率など(2回以上実施)
  • ④ホルモン検査:精子形成に関わるホルモンの異常がないかを確認
  • ⑤その他:超音波検査、染色体検査、精管造影など必要に応じて追加

男性不妊症の主なタイプ

男性不妊症は次のように分類できます。

  • ①精子形成の異常(乏精子症・無精子症など)

    薬物療法や体外受精などの生殖補助医療が検討されます。

  • ②精子の通り道の異常(閉塞性無精子症など)

    通常の射精では精子が出てこないため、専門的治療が必要です。

  • ③射精・勃起の異常(性機能障害)

    ED治療やカウンセリングなど、原因に応じた対応を行います。

4.当科で行っている治療

薬物療法
●ホルモン補充療法
●ビタミン・補酵素・漢方薬など:精子数や運動率の改善を期待して使用します。
※治療効果は個人差がありますが、薬の組み合わせにより一定の改善が得られるケースもあります。

手術療法
●腹腔鏡下精索静脈瘤高位結紮術
※手術は、1泊2日から3泊4日程度の入院で行います。
下記の手術に関しては、当院では行っておりませんが、ご希望のある方には他院をご紹介させていただきます。
●顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術
●精巣内精子採取術( microdissection TESE : testicular sperm extraction )

5.精子凍結保存について

がん治療(抗がん剤や放射線治療)によって精子を作る能力が失われるリスクがある方には、治療前の精子凍結保存をお勧めしています。希望される方は早めにご相談ください。

6.生殖補助医療(ART)との連携

精液所見や治療経過に応じて、以下の生殖補助医療を提案することがあります。

●人工授精(AIH)
●体外受精(IVF)
●顕微授精(ICSI)

これらは主に産婦人科で実施されますが、当科でも連携してサポートしています。

ご相談ください

不妊は珍しいことではなく、治療の選択肢も年々増えています。まずはご夫婦で気軽にご相談ください。当科ではプライバシーに配慮しながら、ていねいに対応させていただきます。