- プログラムの目的と特徴
- カリキュラム
- プログラム1年目
- プログラム2年目
- プログラム3年目
プログラムの目的と特徴
現状の初期臨床研修プログラムは、将来一般臨床医としてプライマリ・ケアに必要な泌尿器科の基礎知識や技術を体得するに十分とは言えない。今回の専門修得コースでは、初期臨床研修プログラムに引き続き3年間の過程を通じ、泌尿器科的な基礎知識のみならず、専門領域の医療知識や技術を身につけ、チーム医療を理解し、他科疾患でも境界領域についての正確な対処ができる泌尿器科専門医の養成を目的とするものである。一方、医療の本質を熟知し、患者のQOLへの配慮、インフォームドコンセントのとれる人間性を養い、将来泌尿器科における専門職や研究職および教職に奉職できるための導入的知識、技能を習熟する。専門修得コース終了後は、日本泌尿器科学会専門医取得に必要な基本的知識と基本的技能を習得したものとみなす。
カリキュラム
(1)一般目標(GIO)
泌尿器科医として基礎的知識と技能を身につけ、多様な泌尿器科的症候を有する患者に対して診断と初期の治療を行う。これらの経験を積み重ねたうえで、外来診療、入院診療を担当し、プライマリ・ケア、疾患に対する説明、全身および局所管理を適切に行う。同時に、各種ボランティア、カンファレンスなどにも参加して人間性を養う。また、研究会や学会にも積極的に参加し、将来の研究活動における導入的知識を習熟する。
(2)行動目標(SBO)
1.外来患者のプライマリ・ケアに対応する医療知識と技術の習得。
2.外来患者の疾患内容の把握と専門的外来治療を行う能力の取得。
3.救急疾患、他科領域境界疾患に対する正確な鑑別診断能力の習得。
4.泌尿器科疾患に対する理学所見のとり方、画像診断および器械的検査法の習得。
5.麻酔、内視鏡手技の習得と泌尿器科領域の小手術の実践。
6.内視鏡手術を含めた泌尿器科手術の実践(術者および第1助手として)。
7.泌尿器科手術の術前、術後管理の習得。
8.腫瘍学、外科病理、化学療法の理解、実践。
9.病棟責任者として泌尿器科入院患者の管理(術前術後管理、インフォームドコンセントや退院後の在宅医療の指導)。
プログラム1年目
- 1.泌尿器科外来患者の問診、病歴を作成する。
- 2.泌尿器科学的診察法を習得する。
- a) 腹部診察法:腎・膀胱・鼠径部の触診。
- b) 男性性器の診察法:外性器の診察および前立腺の触診。
- c) 骨盤内診察法:直腸診、腟双手診。
- 3. 直腸診で得られる所見を正しく記載する。
- a) 前立腺の大きさ、形状、硬度、可動性、圧痛
- b) 肛門括約筋の緊張
- 4.女性および男性(とくに前立腺肥大症患者)の導尿に習熟する。
- 5.静脈性尿路造影(IVU)、尿道造影(UG)、膀胱造影(CG)を実施でき、主要な泌尿器科疾患(尿路奇形、尿路結石、水腎症、腎腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺肥大症、尿道狭窄など)の異常所見を指摘する。
- 6.外来小手術の助手ができる
- a) 陰茎包皮背面切開術および環状切開術
- b) 精管結紮術
- c) 前立腺針生検
- 7.指導医のもと以下の観血的泌尿器科専門手術の第一・二助手や術者ができる。個々の手技の背景を理解する。
- a) 去勢術
- b) 陰嚢水腫根治術
- c) 腎摘出術
- d) 膀胱全摘術、尿路変更術、リンパ節郭清術
- e) 前立腺全摘術
- f) 経皮的腎瘻造設術、経尿道的尿管砕石術
- g) 経尿道的膀胱手術、経尿道的前立腺手術
- 8.泌尿器科入院患者の術前術後管理を理解できる。
- a) 一般検査の検討
- b) 合併症の検討
- c) 輸液
- d) 尿路感染対策
- e) 各種尿路カテーテルの管理
- 9.患者の問題点をよく理解し、要領よく症例提示ができる。
- 10.国際性につき学び、討論参加の準備を行う。
プログラム2年目
- 1.泌尿器科外来患者を指導医のもとで診察し、治療方針をたてることができる
- 2.直腸診にて前立腺肥大症、前立腺癌、その他直腸肛門疾患を鑑別することができる。
- 3.尿道膀胱鏡検査が施行でき、尿道狭窄、前立腺肥大症、膀胱腫瘍などの異常所見を指摘できる。
- 4.各種泌尿器科的画像診断検査で得られた所見を、正しく読影、診断ができる
- a) 静脈性尿路造影(IVU)
- b) 逆行性腎盂造影(RP)
- c) 膀胱造影(CG)術
- d) 逆行性尿道造影(UG)
- e) 血管造影(腹部大動脈造影、腎動脈造影、下大静脈造影、腎静脈造影、骨盤動脈造影)
- f) 超音波検査(腎臓、前立腺など)
- g) コンピュータ断層診断(CT、MS-CT、MRI)
- h) RI検査(レノグラム、腎シンチ、副腎シンチ、骨シンチなど)
- i) リンパ管造影
- 5.指導医のもと以下の外来小手術の術者ができる。
- a) 陰茎包皮背面切開術および環状切開術
- b) 精管結紮術
- c) 前立腺針生検
- d) 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
- 6.指導医のもと以下の観血的泌尿器科専門手術の第一助手や術者ができる。個々の手技の背景を理解する。
- a) 去勢術
- b) 陰嚢水腫根治術術
- c) 腎摘出術
- d) 膀胱全摘術、尿路変更術、リンパ節郭清術
- e) 前立腺全摘術
- f) 経皮的腎瘻造設術、経尿道的尿管砕石術
- g) 経尿道的膀胱手術、経尿道的前立腺手術
- h) 前立腺癌密封小線源挿入療法
- 7. 各種泌尿器科術前術後管理ができる。
- 8. 症例カンファレンスで各種泌尿器科疾患の治療方針を発表できる。
- 9. 患者の問題点をよく理解し、要領よく症例提示ができる。
- 10.国際性につき学び、討論参加の準備を行う。
プログラム3年目
- 1.泌尿器科外来患者を指導医のもとで、他科疾患と境界領域の鑑別診断を行うことができる。
- a) 腹痛:尿路結石、虫垂炎などの消化器疾患、婦人科疾との鑑別。
- b) 血尿:尿路結石、尿路悪性腫瘍、腎炎との鑑別。
- c) 排尿障害:下部尿路閉塞性疾患、神経因性膀胱の鑑別。
- d) 陰嚢内容腫大:精巣腫瘍、精索捻転、精巣上体炎、陰嚢水腫、鼠径ヘルニアの鑑別。
- 2.泌尿器科救急患者の診断、処置ができる
- a) 急性尿路感染症
- b) 尿路結石症
- c) 尿閉
- d) 精索捻転
- 3.下部尿路閉塞患者(前立腺肥大症、尿道狭窄など)や神経
- 4.泌尿器科器械検査法を施行し、その異常所見を指摘できる。
- a) 超音波検査 (腹部、前立腺)
- b) 尿流量測定
- c) 膀胱内圧測定
- d) 尿道膀胱鏡検査
- e) 逆行性腎盂尿管カテーテル検査
- 5.指導医のもと以下の外来小手術の術者ができる。
- a) 去勢術
- b) 尿道ステント留置
- c) 陰嚢水腫根治術
- d) 経皮的膀胱瘻造設術
- e) 経皮的腎瘻造設術
- f) 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
- 6.指導医のもと以下の観血的泌尿器科専門手術の第一助手や術者ができる。個々の手技の背景につき、一層理解を深める。
- a) 腎摘出術
- b) 膀胱全摘術、尿路変更術、リンパ節郭清
- c) 前立腺全摘出術
- d) 経尿道的尿管砕石術
- e) 経尿道的膀胱手術、経尿道的前立腺手術
- f) 副腎摘出術
- g) 前立腺癌密封小線源挿入療法
- 7.各種泌尿器科術前術後管理ができる。
- 8.症例検討会、レントゲン検討会、文献抄読会に参加し、担当患者の症例報告ができる。国際性につき学び、研究会その他での討論に参加する。